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STAR TREK:THE MOTION PICTURE SERIESスター・トレック:劇場版

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スター・トレックII:カーンの逆襲

STAR TREK II
THE WRATH OF KHAN

スター・トレックII
カーンの逆襲

公開年:1982年(日本公開:1983年)
監督:ニコラス・メイヤー
出演者:
ウィリアム・シャトナー
レナード・ニモイ
デフォレスト・ケリー
リカルド・モンタルバン
カースティ・アレイ

―――作品の見どころ―――

『スター・トレックIIカーンの逆襲』(以下、「カーンの逆襲」)の見どころは、なんといってもTOS第24話でカーク船長と壮絶な対決を繰り広げた超人類カーン・ノニエン・シンの復活だ。 敵役ながら絶大な人気を集めたカーンの再登場はTVシリーズ以来のファンも納得の人選だろう。

前作での大幅な予算超過の反省から、予算を大きく削られたために前作が持つ独特のスケール感は失われてしまったが、監督ニコラス・メイヤーは前作における不満、「キャラクターが持つ魅力の減退、欠如」を克服し、カークやスポックマッコイらのキャラクターの魅力をうまく引き出した。

また、ジェネシスのテラフォーミングシミュレーションを3DCGで表現するなど当時最先端の視覚効果や、カーク率いるエンタープライズ号VSカーン率いるリライアント号の連邦宇宙船同士の息詰まる対決など、見どころが満載。

―――老眼鏡をかけたカーク―――

話の本筋とは多少離れるが、TOS劇場版シリーズに共通するテーマとして、老いゆく英雄(=カーク)というものがあるように思われる。前作ではそれが「若い後継者たちに焦りを感じるカーク」という暗い方向で表現された。

一方、本作のカークはTMPよりもさらに年をとり、現場を離れ後進を育てる立場として半ば引退したような描かれ方をしている。メイヤーはさらにそれを象徴的に表すためか、カークに老眼鏡をかけさせている。これにより「カークは老いた」という印象がより強調された。

老眼鏡をかけたカークの姿は、どこかおかしくまた寂しい印象だが、前作のような暗さを出さずに「カークの老い」をたった一つのアイテムで効果的に表現したことは実に見事だと言えるだろう。この徹底した「カークの老い」の表現はラストのカークのセリフをより印象深いものにするのに大きな役割を担っている。

―――スポックの死―――

この作品における一番衝撃的なことと言えばやはりスポックの死だろう。スポックは自爆しようとするカーンのリライアント号から逃れるため放射能で汚染された機関部に飛び込みワープエンジンの復活させ死に至るわけだが、レギュラーキャラクターの中でも1,2を争う人気キャラを死なせてしまうというのはかなり思い切った判断だ。

このスポックの死に関してメイヤーはスポックを生き返らせるつもりはなかったという。その姿勢はかなり徹底したものでIIIでの復活につながる伏線(スポックがマッコイにカトラ(魂)を託すシーン)を入れることに難色を示し、クライマックスの惑星ジェネシスに軟着陸したスポックの棺のシーンも入れるつもりはなかったらしい(『スター・トレックII』音声解説)。

公開当時はまだ続編の制作が流動的でありメイヤーも完結編のつもりで撮ったということもあって、スポックの死のシーンはニモイとカーク提督演じるウィリアム・シャトナーの真に迫った演技が見られる素晴らしいシーンだ。結果的にはスポックは次回作で甦るわけだが、それを差し引いてもこのシーンが一番の見せ場であることは間違いない。

筆者は個人的にはキャラクターを死なせることによって感動を得ようとするパターンはあまり好きではないが―――このシーンに関しては肯定的に見ている。カークはこの作品の中で「死と対決するということは、いかに生きるかということだ」と語るが、スポックはその答えを彼らしい「多数の幸福は少数の幸福に優先する」という論理的な解答を示した。冒頭のコバヤシマルテストから提起された「死との対決」という問題に対する解答を示すためにはスポックの死は物語上必要であったのではないだろうか。

このシーンがシリーズにおいてきわめて印象的なシーンであることは、リブート版の「2作目」にあたる『イントゥー・ダークネス』においてキャラを入れ替えて引用された事からもわかるだろう。

あのシーン単独でも映画のクライマックスシーンとしては十分だが、引用元であるこちらのシーンも知っていれば思わずニヤリとしてしまう名シーンだ(逆に『イントゥー・ダークネス』先に観てからこちらを見れば「なるほどこれか!」となるだろう)。

―――総評―――

「カーンの逆襲」はTOS劇場版の中でも人気が高い作品だ。人気の高かった悪役カーンを復活させ、息詰まる宇宙艦同士の戦闘など見どころが非常に多い。特にカーンの存在は大きい。彼のような絶対的な悪役の存在のおかげで前作よりも物語が格段に分かりやすくなり、娯楽作として単純な面白さをうまく引き出した。

一つ不満を挙げるとするならばカーンがTVシリーズと比べてやや余裕が無い点だ。彼は独善的であったが、それを納得させるだけの度量がある人物として描かれていたが、本作ではすぐに怒鳴り散らし、カークの古典的な挑発に簡単に乗ってしまうなどTVシリーズと比べるといささか愚鈍に描かれているのが気になる。

もっとも、これはカーンが復讐心に駆られて冷静でなかったことを表す演出であったろうし、2時間にも満たない上映時間の中であまり凝ったこともさせられなかったであろうことは考慮に入れておかねばならないだろう。

TOS第24話「宇宙の帝王」を見ていなければ分からない…ことはない。だが、知っておいた方がより楽しめるのは間違いない。

このページはネタばれありで書かれているのでおそらくすでに観た方が多かろうと思われるが、もし、「カーンの逆襲」を観たが、「宇宙の帝王」は観ていないという方も、一度「宇宙の帝王」を観られた後、もう一度「カーンの逆襲」を観直すことをオススメしたい。TVシリーズのカーンは劇場版よりも海千山千なキャラクターとして描かれているので、カーンというキャラクターの魅力再認識できるからだ。


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