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スター・トレック
THE MOTION PICTURE

※以下では『スター・トレック THE MOTION PICTURE』のネタバレ要素を含んでいます。閲覧の際はご注意ください

スター・トレック ディレクターズ・エディション 特別完全版(本編ディスクのみ)(DVD)

―――作品の見どころ―――

『スター・トレック THE MOTION PICTURE』(以下、『TMP』)の見どころは、まずもってその圧倒的なスケール感に求めることができるだろう。冒頭のクリンゴン艦隊が未知のエネルギー雲へ突進するシーンは非常に素晴らしく、これから展開されるであろう壮大な物語を感じさせるものに仕上がっている。

 物語の核心を担う“ヴィジャー”はエネルギーフィールド大きさからして82天文単位(約120億km。ディレクターズエディションでは2天文単位=約3億kmに修正されている)という破格のスケール。この巨大なヴィジャーが目的すら明らかにならないまま進路上の障害をすべて消滅させつつ地球へ侵攻、カーク率いるエンタープライズ号がこれを迎え撃つというストーリーはシリーズ初の劇場版としてふさわしい壮大な物語と言えるだろう。

 その他、劇場用に新規にデザイン、制作されたエンタープライズ号は、それまでの低予算ゆえ、みすぼらしかった小さな模型から、大画面にも耐える非常に精緻かつ美麗な大型模型で表現され、このエンタープライズ号を見るだけでも、この作品を見る価値がある、と言ってもいいかもしれない。

―――カーク船長の変化―――

 この作品で気になる点はカークの暗さだ。
 カークと言えば、陽気で恋多き人で、時に失敗も犯すが持ち前の度胸と機転で困難を切り抜ける頼れる船長といったイメージだが、本作のカークは後任艦長のデッカーから指揮権を奪い取ってみたり、カークが誤った命令を下したのを訂正したデッカーを難詰したりと、観客が求めていたカーク像とはズレがあったのではないだろうか。
 カーク、スポック、マッコイの三人のやり取りはテレビシリーズにおいて物語の最大の魅力の一つであったが、本作においては素でスポックが泣いたという点を除いてこの三人はあまり印象深い活躍は見られなかった。

―――アイリーアとデッカー―――

 では、この作品で印象深い活躍を見せた登場人物は誰か?おそらくこの作品を見たほとんどの人が「アイリーア」と答えるのではないだろうか。
 アイリーア中尉はデルタ人という異星人という設定で、演じたのは元ミス・ユニバースパーシス・カンバータ
 パーシスはインド出身で、元ミス・ユニバースということからも分かるように大変な美女。そのうえ、デルタ人は頭髪が無いという設定でスキンヘッドにしているため、よりエキゾチックな魅力が際立ち、アイリーアは非常にインパクトのあるキャラクターだった。

 デッカーはアイリーアの元恋人でカークの後任の艦長だったキャラで、カークの艦長復帰に伴い副長に格下げされたことになっており、艦の指揮を巡る若きデッカーと老いつつあるカークとの対立が作品のテーマの一つになっていた。

 「宇宙大作戦」の中心人物はカーク達であるが、この作品に限っては、実はこのアイリーアとデッカーが物語の中心であり、カーク達は傍観者のような印象が強いように思われる。特にヴィジャーの脅威を克服するシーンは彼らの犠牲の上に成り立っており、カーク達はその有様を文字通り見ているだけだった。

―――総評―――

 TMPの見どころはそのストーリーと映像の壮大さであるが、スケールの大きさを感じさせる重厚な演出は展開の鈍重さにもつながっているように思える。例えば、上記で見どころとして紹介した新生エンタープライズ号のお披露目のシーンは、船の全体像が明らかになるまで約3分、カーク提督が船に乗り込むまで約6分といかにも長い。ファンならともかく、初めて「スター・トレック」を見る人にとっては少々退屈なシーンと思われても仕方ないだろう。
 上記のシーンの他、ヴィジャーへの最接近のシーン等も内容の濃度に比していささか長く、全体的に冗長な印象が残る。

 その他、未知の脅威“ヴィジャー”は全体像が最後まで明らかにならない(ディレクターズ・エディションではCGによってヴィジャーの全体像が再現されている)。これは当時の撮影技術の限界や、ヴィジャーの模型が破損するなどのアクシデントに見舞われたためであるが、これによって、地球や人類に対して脅威であるヴィジャーがイメージしにくいものになってしまったのもマイナスだろう。
 また、おそらくはこのはっきりとしない敵を中心としたはっきりしないストーリーは、これより少し前にヒットした『2001年宇宙の旅』を意識したのではないかと思われる。『2001年…』の場合はその難解なストーリーが当時の感覚的な若者にウケたことがヒットの原因であると考えられるが、一方の『TMP』は、明快だったTOSの劇場版であるのだから、そもそも観客が求めるものとはズレがあったことは指摘すべき点かもしれない。

 一方、上記のとおり、従来のレギュラーキャラクターであるカーク達のキャラクターはそれほど深く掘り下げられた作りではないため、実は「スター・トレック」をよく知らない人でも抵抗なく見ることができる作品である、とも言える。ちなみに第11作を監督したJ.J.エイブラムスが唯一見たスター・トレックは同作であるという。かく言う筆者自身も最初に見た「スター・トレック」はこの作品である。

 幸い筆者はTMPの持つ「何だかよく分からないがスケール感がある」ところに惹かれてスター・トレックシリーズを見るようになったが、スター・トレックを深く知れば知るほど、この作品におけるキャラクターの描かれ方に不満が募っていったため、やはり人物描写に問題があるのは間違いないだろう。だが、最初に感じた「何だかよく分からないがスケール感がある」という印象は今も変わらない。「映画らしさ」という点においては本作の後に続くシリーズでもこれを超えている作品はないように思える。

 また、同作は後のシリーズ展開において大きな役割を果たした。この作品に登場した、艦長と対立する副長とその元恋人のクルーという設定は後の『新スター・トレック』のライカーとディアナに流用され、ジェリー・ゴールドスミスが作曲したメインテーマは若干形を変えて『新スター・トレック』のメインテーマとして使用され、アレクサンダー・カレッジが作曲した『宇宙大作戦』のメインテーマと並び『スター・トレック』を象徴する楽曲となっている。

 その他、ヴィジャー脅威ではあるが悪ではなく敵でもない、という点は重要だろう。後の「カーンの逆襲」や「未知の世界」など、評価が高い劇場作品は闘争にメインテーマが置かれているが、そもそも『スター・トレック』自体は宇宙戦争モノではないのだから、TMPの哲学的なテーマは娯楽作としては退屈なものかもしれないが、『スター・トレック』が本来持つテーマにはこちらの方が近いのかもしれない。

 評価に関しては賛否が分かれる同作であるが、後に展開される『スター・トレック』各シリーズの基礎となった作品であることは間違いないだろう。

―――付記―――

 劇場版第一作となった同作は制作までかなり紆余曲折があった。以下はTMP制作・公開に至るまでの経緯を著したものである

  • 1975年:ジーン・ロッデンベリーがパラマウント・ピクチャーズに『The God Thing』という映画用の脚本を提出するが、ボツになる
  • 1976年9月17日:NASAのスペースシャトルオービタ「エンタープライズ」の発表に合わせ、パラマウントが劇場版『スター・トレック』の制作を発表
  • 1977年5月:劇場版『スター・トレック』は「Planet of the Titans」と題され、脚本は完成していたが制作中止が決定
  • 1977年6月:TVシリーズ『スター・トレック:フェイズII』が企画される
  • 1977年11月:『フェイズII』の制作中止が決定し、「TMP」へ企画変更
  • 1978年8月:「TMP」撮影開始
  • 1979年2月:特殊効果の制作が大幅に遅れ、当初特効を担当していたロバート・エイベルが解雇され、ダグラス・トランブル等に交代、特殊効果が一から作り直される
  • 1979年12月:公開
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