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STAR TREK:THE MOTION PICTURE SERIESスター・トレック:劇場版

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スター・トレックVI:未知の世界

STAR TREK VI
THE UNDISCOVERED COUNTRY

スター・トレックVI
未知の世界

公開年:1991年(日本公開:1992)
監督:ニコラス・メイヤー
出演者:
ウィリアム・シャトナー
レナード・ニモイ
デフォレスト・ケリー
キム・キャトラル
クリストファー・プラマー

―――作品の見どころ―――

『スター・トレックIV未知の世界』(以下、「未知の世界」)の見どころは、長年の宿敵クリンゴン帝国との和平という歴史的大事件を描いた点だ。公開当時は現実においても東西冷戦が終結し、非常にタイムリーと言える内容を扱った作品であった。

物語冒頭では昇進してエクセルシオール号艦長となったミスター・カトーが登場し、時間の経過とカークの引退が差し迫っていることが分かる。一世紀に渡り対立した宿敵との和平という文字通りのラストミッションに向かうカーク達の活躍に注目だ。

本作では「カーンの逆襲」のニコラス・メイヤーが再びメガホンをとり、『スター・トレック』における歴史的大事件をリアルに描いている。

―――東西冷戦終結とリンクした二大勢力の和平を描いたストーリー―――

この作品が公開された1991年は、東西冷戦が集結して間もない時期で、冒頭でのプラクシス爆発はチェルノブイリ原発の爆発事故になぞらえているものだと言われている。

現在はそれからかなり時間を経ているのであまり感じないかもしれないが、当時としてはかなり生々しさを覚える設定だったに違いない。だが、監督のメイヤーはその設定をうまくスター・トレック世界に落としこみ、TOSで対立していた二大勢力の和平への道を見事に描いている。

クリンゴンとの対立はTOSの中でも様々なドラマを生み出した。時に全面戦争の危機に陥ったり、フワフワした生き物とともにドタバタ喜劇を演じたり…と、やはりTOSにおいて、クリンゴン人は最も印象深い敵役だった。それだけにこの種族との和平というテーマは完結編にふさわしいものと言えるだろう。それも全面戦争でどちらかがどちらかを屈服させるというようなものでなく、両勢力が生きるために「共に歩む」という道を選択できたのはスター・トレック作品がもつ善良で楽観的な未来像という世界観がもたらした最良の結果だったと言っても過言ではない。

―――ヴァレリスの“論理的な”行動―――

このストーリーで注意したいのはエンタープライズ号の新パイロット、ヴァレリスの動きだ。カークマッコイがクリンゴン総裁暗殺の罪で逮捕された時、救出を強く主張し、真犯人の捜査にも積極的だったのがヴァレリスだったが、実はヴァレリスはクリンゴンとの和平を望まない保守強硬派だった=カーク達とは真逆の立場にいる人間だったわけであり、カークの救出に協力的だった彼女の行動は矛盾があると思われるかもしれない。

だが、彼女の行動は矛盾していない。カークの救出に積極的だったのはエンタープライズ号に強硬手段をとらせ戦端を開く口実にしたかったのだと考えられるし、捜査に積極的だったのも自らの疑いをそらす目的があったためだろう。そう考えるとヴァレリスの立ち位置というのは絶妙だった。目的はどうあれ、カーク達の利益になることをしていただけに敵対者だとは思いづらいようにしている(それだけに会食前のヴァレリスの思わせぶりな言動は余計だったとも言えるのだが)。このストーリーにおける敵役としてはクリンゴンの強硬派チャン将軍が注目されるが、ヴァレリスの“論理的な”食わせ者ぶりにも注目したい。

なお、監督のメイヤーはヴァレリスの役柄は当初、彼女ではなくII、III、IVに登場したサービックを充てるつもりだったが、サービック役のカースティにオファーを断られたことや、ジーン・ロッデンベリーの「サービックを裏切り者にしたくない」という意向から、ヴァレリスというキャラクターが新たに設定されている。(過去作の味方が裏切るという要素はカートライトがになっている)

―――総評―――

「未知の世界」はシリーズの中でも評価が高い作品だ。クリンゴンとの和平に至る過程をロミュラン帝国の陰謀などもからめながら非常にうまくまとめている良作だ。映像を盛り上げるクリフ・エイデルマンの音楽もややスター・トレックらしくないが出来自体は重厚な物語とあっていて好印象。

その他、本作最大の敵で、クリンゴン人ながら重度のシェイクスピアマニアというチャン将軍も非常にアクの強い、カークの敵としては不足のない曲者ぶりを発揮していたことでストーリーを盛り上げた。

ただ、この作品に関して不満を上げるとするならば、全体的に客観的で今一つ臨場感にやや欠ける点だ。メイヤー監督の抑制的な演出(何しろ「カーンの逆襲」の時にシャトナーに過剰演技過ぎる、もっと抑えろと注文した監督である)もあり、娯楽作としてはやや物足りなさを感じてしまう。

上述の通り、あまりによくまとまりすぎて大きなインパクトには欠けるという点はあるものの、やはりTOSシリーズの映画としては1,2を争う出来であることは間違いない。だが、やはり完結編なので、初めて観る分にはあまりお勧めできない。うっかり最初にみてしまった方は、せめて劇場作品Iから観直して、締めくくりにもう一度この作品を見ると良いだろう。


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