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スター・トレック(2009)

※以下では『スター・トレックVI 未知の世界』のネタバレ要素を含んでいます。閲覧の際はご注意ください

[初版・映画ポスター] スター・トレック [ship/white on black-DS]

―――作品の見どころ―――

『スター・トレック(2009年版)』(以下、「スター・トレック」)の見どころは、1991年に完結した『宇宙大作戦(TOS)』を、新たなキャスティング、新たなストーリーで、スピード感あふれる一大娯楽作にリ・イマジネーションした点だ。
 従来のシリーズのような低予算の制約からある程度解放された本作は迫力ある映像作りにも成功し、新たな『スター・トレック』の可能性を示す挑戦的な作品でもある。

―――改善?改悪?クルーの新解釈―――

 冒頭のネロのタイムスリップにより、歴史が変わってしまったところから始まる本作だが、それによってキャラクターの性格などもずいぶんと改変されたようだ。
 大口を叩く三枚目から純朴な少年になったチェコフや、ただのマスコット的キャラクターからヒロインにまで昇格したウフーラなど従来のイメージから大きく改変され、扱いが良くなったキャラクターもいる。だが、主人公、カークに関しては今のところ改悪と言っていいだろう。

 この作品で描かれるカークは「奔放で自信過剰な跳ねっ返りの青年」といった風である。オリジナルの方も奔放ではあるが根は真面目なのでその点は少し違う。ただ、問題なのはオリジナルとの違いよりも、「奔放で自信過剰な跳ねっ返りの青年」というのは主人公のタイプとしてはけっして珍しいタイプではないということだ。むしろ今風の若者と言ってよく、どちらかと言えばステレオタイプ的なキャラクターだ。個性があまり感じられないのである。

 これは旧来のファンの贔屓目だと思われるかもしれないが、オリジナルに比べるとこの若きカークは残念ながら大きく魅力に欠けるように思えた。有能だが茶目っ気も多く、時には失敗もするオリジナルのカークは人間的だったが、こちらのカークはろくに艦隊の訓練も受けていないのに、現役士官よりも遥かに優秀であらゆる危機も簡単に乗り越えてしまう常人離れした天才であり今ひとつ人間味に欠けるからだ。

―――ちょっと気になる?マンガ的展開―――

 この作品全体を見ると展開がいかにもマンガ的だ。前述のコバヤシマルテストのシーンや、カークが追放された惑星に都合よく怪獣がいるところ、極めつけはアカデミー在学中のカークが一気に大佐相当職の船長になってしまうなど、今ひとつリアリティに欠ける。天才的な主人公がトントン拍子に出世して大活躍するなどというのは、まるで少年漫画のようだ。

 カークはこの先、経験と才能からではなく、天才的な才能のみで航海を続けなければならなくなる。前段にも少し触れていることだが、カークはシリーズが進むごとに否応なしに超人化していく危険性があることは指摘しなければならないだろう。何しろ、彼はクルーとしての下積み時代が全くと言っていいほどないのだから、彼は過去の経験に基づかない、思いつきやひらめきで様々な危機を乗り越えるほかないのだ。超人的な天才でなければそんな芸当はできないだろう。
 もちろん、スポックマッコイのサポートはあるだろうが、最終的に決着を付けるのは船長であり主人公であるカークだ。天才的な才能という裏付けだけで、その行動にどれだけ説得力を持たせることができるだろうか。先々のことを考えるとその点が非常に気になる点ではある。

―――総評―――

 この映画の特徴を一言で言うなら「イマドキ」だ。テンポの良いストーリー展開に、迫力ある映像。あまり深く考えずサックリ見られるのは、いかにも「イマドキ」の映画だ。レンズフレアーの多用など、この『スター・トレック』に独特の特徴(と、いうかレンズフレアーの多用やレンズの汚れをあえて見せるのはJ.J.エイブラムス作品の特徴ではあるのだが)を与えようとしていることも見受けられるが、全般的にはやはり、ありふれた「イマドキ」の映画だ。
 「イマドキ」の映画なので、流行には乗っかっていると言っていいだろう。だが、不朽の名作になるかどうかというと、甚だ疑問だ。単純なSFアクションとしては良作だが、あくまで流行の「イマドキ」のSFアクション映画として終わるかもしれない。

 そのように危惧する理由の一つは、作品のバックボーンの弱さだ。『スター・トレック』の名は冠しているものの、ストーリーとしては過去のシリーズと断絶しているため、従来のシリーズにおけるテレビドラマのようなバックボーンが殆ど無い。そのため、一度劇場で見てしまえば事足りる内容しかないのだ。そもそもこの作品単独のストーリーは単純かつ平凡なので繰り返し見る必要は殆どないと言っていい。この作品で観るべき点はストーリーよりも映像のほうが比重が高い。これは従来のシリーズの特徴とは真逆の特徴だ。

 ただ、何度も観るに値しないという評価はあくまで現段階におけるものである。シリーズ化は決定しているので、今後の後継作品が続々出てくれば、いわゆる人気シリーズの第一作としてその地位を確立していくことになるだろう。ただ、もし2作でシリーズが打ちきりになってしまった場合はこの「イマドキ」の映画は時代の流れと共に消えていくことになることは想像に難くない。

 以上のようにやや否定的な評価と思われるかもしれないが、旧来の『スター・トレック』シリーズがマンネリ化していたのは事実だし、存続のためには何らかの形で大鉈を振るう必要があったのは確かだ。その意味で、この作品が果たした役割は大きい。単体としては不朽の名作には成り得ないだろうが、シリーズの長期化で凝り固まった『スター・トレック』像に一石を投じた作品であることは間違いなく、新たな『スター・トレック』像への基礎となる重要な作品であることは明らかである。
 『スター・トレック』シリーズとしてではなく、一SFアクション作品として見れば、あまりストレスなく見られる良作である。

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